インターン生が挑んだ社内DX。AIアシスタント「ちょっとaico」開発ストーリー。

開発ストーリー

2025.07.30

社内での情報探しに時間を取られ、本来の業務に集中できないという課題は、多くの企業で見られます。この課題を解決するため、インターン生とともに新たなAIアシスタント「ちょっとaico」の開発プロジェクトを開始しました。本記事では、その開発背景、機能、そして今後の展望についてご紹介します。

K.H
台湾の大学にて、機械学習を活用し、病院内での患者の移動や受診を支援する対話型医療AIシステムの開発に着手。 AIを用いた実践的なサービス開発に関心を持ち、台湾からリモートで、ダイアモンドヘッドの長期インターンに参加。

きっかけ・はじまり

社内を悩ませる「情報探しの壁」

プロジェクトについて教えてください。

このプロジェクトでは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術を使い、社内ポータルにある情報をもとに、社員の業務や制度に関する疑問に自然な言葉でわかりやすく答えるAIアシスタント「ちょっとaico」を作ることを目指しています。
RAGは、社員からの質問に対して、まず社内の関連ドキュメントを探し出し、その情報を使って生成AIが回答を作る仕組みです。
福利厚生の使い方や社内ルールの確認など、日常の業務で生まれる疑問に対して、素早く正確に答えられることを目標としています。
これにより、社員が情報を探す時間を減らし、業務の効率アップにつなげたいと考えています。

アサインされた経緯を教えてください。

私はインターン生としてAIラボに参加し、プロジェクトの開発に関わらせていただきました。インターン初期には、まずAIラボが関わっているいくつかのプロジェクトを理解するところからスタートし、最終的にこのプロジェクトに参加させていただけることになりました。

プロジェクトの話を聞いた時にどう思いましたか?

プロジェクトの概要を聞いたとき、AI技術を使って実際の業務課題に取り組む、とても実践的なテーマだと感じました。幅広い情報ではなく、社内という限られた範囲に特化している点に、面白さと難しさがあるなと。
社内のドキュメントを使うからこそ、間違った情報を返さないことや、信頼できる回答を出すことがすごく大切で、完成すれば多くの社員が日々の業務で使うことになるので、このプロジェクトの重要性を強く感じました。

正確な情報を提供することが特に求められるため、ただ動くだけではなく、実際の業務で安心して使える品質を保つための仕組み作りが必要で、非常に高度な開発になると思いました。
現場のニーズにしっかり根ざしたプロジェクトなので、開発したプロダクトがすぐに実際の業務で使われて、そこからフィードバックをもらえる点に、大きなやりがいを感じています。

どのようにしたか

チームで挑んだ、情報検索の最適化と生産性向上

解決したい課題は何だと考えましたか?

社内の共有情報へのアクセスをもっと効率的にすることです。当社では、ポータルサイトを活用して情報共有しており、そこには膨大な資料が蓄積されていますが、欲しい情報にたどり着くまでに時間がかかってしまうことが多くありました。
たとえば、社内Wi-Fiのパスワードや会議室の予約方法など、日常業務でよく使う情報へのアクセスをもっとスムーズになれば、情報を探す時間を減らし、業務の生産性アップにつながっていくと考えました。

業務はどのように進めましたか?

かなり自由に動かせる環境で、幅広いタスクを担当しました。主に、ユーザーとの会話履歴の保存と表示機能の開発、Googleドライブのデータソースを対象とした埋め込み処理、そしてRAG(Retrieval-Augmented Generation)の精度を上げるための改善や評価基盤の構築に取り組みました。
開発は毎週の定例に向けて、日々目標を立てながら進めていきました。進捗や成果はBacklogにまとめて共有し、チーム全体が常に状況を把握できるようにしていました。

制作中に難しいと感じたことはなんですか?

速度と精度のバランスを取るのがとても難しいと感じました。
RAGの精度を上げるためには、質問の意味を補完する前処理や、検索結果と質問の関連性を高める後処理など、追加のプロセスが必要になります。しかし、その分レスポンス速度が遅くなってしまうこともあります。より正確な答えを返すために処理を増やすと、ユーザーが感じる待ち時間が長くなってしまうことがあるのです。

正しい答えをできるだけ早く返す、この両立が非常に難しく、どこまでの精度向上が効果的で、どこからはコストが高すぎるのか、常に検討しながら調整していました。
また、一貫して心がけていたのは、他のメンバーが使いやすく、引き継ぎやすいコードを書くことです。特にインターンという立場での参加だったため、プロジェクトの継続性や他の開発者への配慮を意識しました。

そして何より、最終的に使うのは社員の皆さんなので、開発者視点だけでなく、常にユーザーの目線で考えることを大切にしていました。

何をしたか

自然な言葉で、社内の疑問にちゃんと答えるチャットボット。

成果物について教えてください。

「ちょっとaico」は、社員が業務に関する疑問を投げかけると、社内ポータルに蓄積された情報をもとに、自然な言葉で答えてくれるチャットボットです。
できることは、大きく3つあります。

1.RAGベースの情報検索
 あらかじめ社内のドキュメントをベクトル化しておくことで、質問の内容に合いそうな情報を自動で探してくれます。今は社内ポータルを対象としていますが、GoogleドライブにあるPDFやスプレッドシート、スライドなどにも対応できるようになっています。

2.AIによる回答の生成
 見つけた情報をもとに、AWS BedrockのAIが回答をつくってくれます。参照元のリンクもついてくるので、「ちゃんと調べたうえで言ってくれている」という安心感があります。

3.会話の履歴を保存
 これまでのやりとりはすべて記録されていて、API経由で取り出すことも可能です。管理画面では、過去の会話を一覧で確認できるようになっていて、今後の機能追加や改善にもつながる基盤ができました。

実際に運用してみて、特に大きく2つの成果がありました。

ひとつは、情報を探すのにかかっていた時間を大きく減らせたこと。
これまで手間がかかっていた資料探しがグッと楽になり、特に入社して間もないメンバーにとっては、疑問をすぐに解決できる心強いサポート役になっています。

もうひとつは、生成AIを業務で活用する具体的な運用の枠組みをつくれたこと。
「実際の業務にフィットするAIツールを、自分たちで開発・導入できた」という経験が、今後ほかの社内ツールやEC関連サービスにも広げていけそうだと感じています。

これから

“ちょっとaico”に込めた想いと、実務に近い環境で得たリアルな学び

プロジェクトを振り返って学びや気づきはありましたか?

今回の取り組みを通して、本当にたくさんの学びがありましたが、特に印象に残っているのは次の3つです。

1.チーム開発の難しさと面白さ
プロジェクトに参加した時点で、すでに開発は始まっていて、最初はコードの構成や意図をつかむのにかなり苦労しました。でもそのぶん、コードリーディングを通じて他のメンバーの考え方や設計の工夫に触れることができ、とても刺激になりました。

2.ツールや技術の選び方が大事だということ
以前の研究では「とにかく動けばいい」という意識でツールを選んでいたのですが、今回のような実務に近い開発では、目的や制約に合った選定がとても大事だと実感しました。比較や検討のプロセスが、そのまま最終的な品質にも影響するんだな、ということを身をもって学びました。

3.開発全体の流れをつかむことの大切さ
たとえば履歴保存の機能では、保存処理からAPI設計、フロントでの表示まで一通り担当させてもらい、部分ごとの実装だけでなく、「全体のつながりを意識して作ること」がとても大切なんだと体感しました。

今後、このプロジェクトがどのようになって欲しいと思いますか?

今後は、「ちょっとaico」がもっと多くの社員にとって身近な存在になって、社内の情報基盤のひとつとして定着していってほしいなと思っています。

また、使われ方のログをもとに、回答の精度を高めていったり、もっと便利な機能につなげていけそうな可能性も感じています。実際に今もRAGの精度改善には取り組んでいて、スピードと正確さのバランスが取れたAIを目指しています。

今回の取り組みが、「生成AIをうまく業務に活かせた事例」として社内でも認識されて、ゆくゆくは社外向け──たとえばECサイトなどにも展開できるようなプロダクトに育ってくれたらうれしいです。

目次

EC運用は、AIでもっとスマートに。

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